安定した就職先として長年新卒の就職先として人気の銀行ですが、実際に働いてみると「自分には向いていなかった」という方も多いようです。例えば「ノルマがきつい」「閉鎖的な企業体質に我慢ならない」「常に勉強しなければならない」などの理由で転職を考える人も少なくないようです。
銀行員は転職しやすい職業なのでしょうか。このコラムでは銀行員出身の筆者が、銀行員が転職するにあたって有利な経験やスキル等についてまとめ、かつ銀行員が転職するのに有利と思われる業界をご紹介します。
銀行員自身が分からない強みを3つセレクト!
銀行員である自分が考えても何が強みなのか分からないという言葉を聞きます。そこで個人の強みを考える前に客観的に捉えた銀行員全般としての強みを3つに絞り込んでご紹介します。こちらを読むと自分では分からなかった意外な強みが見えてくるかも知れません。
1.数字に強く論理的思考力が高い
銀行員は財務諸表を読みこなした上で企業の将来性や経営者の特性を把握し、その企業が融資実行すべきかどうかを日々銀行内において稟議書等の論理的な文書を作成し、かつ論理的に口頭で説明しています。また銀行員は預金・為替に加え、融資の実行のみならず債権回収、投資信託や保険販売等の資産運用手段の提供等幅広い金融に関する知識・経験を持ちます。
このような数字に強いこと・論理的思考力の高いことはビジネスマン共通に求められる資質であり、銀行員はどのような企業においても求められる人材といえます。
2.ストレス耐性がある
若い時から意思決定権があるクセがある企業経営者や富裕層と接し、きついノルマとそれに対する上司・同僚・部下からの成果や嫉妬等の精神的なプレッシャーという板挟み。それを日々乗り越えてきた銀行員のストレス耐性は、どのような企業においても求められています。
というのは、どのような業界でも「成果に達成に向けてストレスに耐えること」は出世する人、成功する人共通の資質だからです。例えば新聞や雑誌、ネット上で成功したサラリーマン経営者の記事やコラムを読むと大抵が「きついノルマ」と「上司・同僚・部下、さらにお客さまからの有形無形のプレッシャー」に耐えて出世してきた人が多いことが分かります。
悲しい現実ではありますが、未だ日本では「働き方改革」には程遠く、「ブラックな環境に耐えて出世すること」が美徳とされているのが現状です。
3.リスク感応度が高い
本業である個人・法人融資においては貸倒れが発生し回収できなくなるリスクを考慮して融資実行を完遂すること、投資信託等の個人向け金融商品販売等においては価格変動リスク等に勘案してお客さまに商品提案・購入していただくこと、これら両者とも過去実績の分析から将来をある程度見通す能力が必要とされます。このようなリスクと日々向き合ってきた銀行員はその論理的思考力の強さと相まって一般事業会社においても戦略立案等、将来を見通す必要がある業務において適応しやすいと考えられます。
銀行員に向いている業界とは?(金融編)
銀行員が転職するにあたり向いている業界は無数にありますが、やはり一般事業会社よりは同じ業態ではなくとも金融業界にフィットしやすいと考えられます。
証券会社
銀行から転職するケースは比較的多い業態の金融機関は主に2つです。ひとつは証券会社です。そもそもメガバンクグループや大手地銀ではグループ傘下に証券会社を持っており、ある一定の年齢以上の人材は出向するケースが多いです。例えば大手5社と言われる総合証券会社のうち、
- SMBC日興証券(三井住友フィナンシャルグループ系)
- みずほ証券(みずほフィナンシャルグループ系)
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJフィナンシャル・グループ系)
はメガバンクグループ3社の傘下です。証券会社の業務内容は主に、
- ブローカー業務(投資家の売買注文を証券取引所に伝える)
- ディーラー業務(証券会社自身が株式の売買を行う)
- アンダーライター業務(発行証券を買い取って投資家に売る)
- セリング業務(発行証券を一時的に預かって投資家に売るセリング業務)
の4つがあります。銀行の支店で金融商品販売を行っていた方、銀行本部において資金証券部等の余資運用の業務をされていた方など証券会社にはその業務経験を活かすことができる場があります。
アセットマネジメント
もうひとつはアセットマネジメント会社です。この業種は営業店に勤務する方には馴染みが深い公募もしくは私募の投資信託の運用や主に公的・私的年金の運用に係る投資顧問業を行っています。やはり大手銀行グループ傘下にもグループ会社が存在し多数の銀行出身の人材が出向者・転職者として勤務しています。例えば、投資信託を運用するアセットマネジメント会社で国内大手と言われる7社のうち、
- 三菱UFJ国際投信(三菱UFJフィナンシャル・グループ系)
- 日興アセットマネジメント(三井住友トラスト・ホールディングス系)
- アセットマネジメントOne(みずほフィナンシャルグループ系)
- 三井住友DSアセットマネジメント(三井住友フィナンシャルグループ系)
- 三井住友トラスト・アセットマネジメント(三井住友トラスト・ホールディングス系)
の5つは大手銀行グループに属しています。アセットマネジメント会社の業務はあまり知られていませんが、銀行員であればその業務経験からアナリストやポートフォリオマネージャー(ファンドマネージャー)といった運用部門、リレーションシップマネージャー(マーケター)やホールセラーといった営業部門など幅広く従事できるチャンスがあります。
ただ、アセットマネジメント会社は特に大手では金融以外の全業種を含めてトップクラスの高給を出す会社が多い一方で、大手の会社でも社員数が1,000名前後といった少数精鋭の企業が多いため入社はかなりの難関です。
IFA
銀行の営業店に勤務する方で、株式は扱わないものの投資信託の販売は行っていた方は多いのではないでしょうか。多くのIFAで取り扱いが最も多い商品である投資信託は銀行においても取り扱いが多い商品です。多くの銀行で厳しいノルマが課せられる中、相応の実績を上げてきた腕に自信がある方はIFAでも活躍できると考えられます。
なお、IFAについては以下の記事(「昨今注目度が高まるIFA、その職業としての魅力をご紹介します!」)等を参考にして頂ければと思います。
銀行員に向いている業界とは?(その他編)
もちろん以下に掲げるような金融以外の業界でも銀行員は求められています。
一般企業
高いストレス耐性、財務に関する豊富な知識・経験を持つ銀行員は金融以外の一般企業への転職でも大いに求められています。特に財務、経理、総務といった管理部門の担当者・幹部として求められるケースが多いようです。
公務員
銀行員から公務員になるケースは比較的多いと言えます。そもそも銀行員は他業界に比べると真面目な人が多く、一方で安定かつ社会的地位が高い転職先を求める傾向があります。その意味では公務員が銀行員の転職先として人気があるのは頷けます。年功序列の文化がある点も銀行員との相性が良いと言われ、さらにノルマに追われて営業をしたくないという思考の方にフィットしやすいのも好まれる理由です。
一般に公務員は地方公務員、国家公務員問わず公務員試験を受験する必要がありますが、普段から検定試験や資格試験で勉強癖がついている銀行員は面接前の関門である公務員試験突破にも強みがありそうです。
不動産
銀行員、特に法人融資の経験者は、実務での担保設定のために不動産知識を有している場合が多く宅地建物取引士の資格を保有する方もいます。また、個人融資の経験者であれば、個人向けの不動産会社では住宅ローンの知識が必要になりますので転職先の幅が広がります。
まとめ
以上、このコラムでは銀行員の転職事情について、その強みと向いている業界を中心に触れてきました。業界としては上記のほかにもコンサルティング会社やM&A会社、フィンテック会社なども銀行員を求める傾向があります。転職を考える際に参考にして頂ければ幸いです。
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