「金融で地域を、日本を活性化させる」そのような志を持って銀行に就職したのに「何か、違う」「こんなはずじゃなかった」という理想と現実に直面する方が多いと言われる銀行業界。理想と現実の狭間のギャップの中で転職を考える方も少なくないと思います。今回はそんな銀行からの転職を考える理由について5つピックアップして紹介します。
銀行員が転職を考える理由
1.人間関係がつらい
あらゆる業種で最も転職を決意する理由がこの人間関係といいます。職場での人間関係にまつわるトラブルには、
- 厳しい上下関係
- パワハラ
- 悪口等の足の引っ張り合い
- 学閥・役員によるグループ等の派閥の存在
などが代表的です。また金融業界、特に銀行員は証券会社に比べ上下関係に厳しい業界と言われます。上意下達は厳格であり、上司の意に反すると出世は期待できません。この上意下達という文化はパワハラの温床といえます。昨今はいわゆるパワハラ防止法の施行やSNSの発達や世間の関心の高さにより露骨なケースは減る方向にあるようですが、逆に子どものいじめのように陰湿化するのではないかという向きもあるようです。
また、銀行に限らない話ですが歴史がある企業は、派閥間での争い等の古い体質が残る組織もあります。若手には理解できない文化を感じることもあるでしょう。
2.ノルマがつらい
どの業種でも人間関係が転職理由のトップとして挙げられることが多いですが、金融業界ではノルマが転職を考える理由のトップであることが多いのではないでしょうか。銀行はノルマが多く厳しい業界です。
そもそも銀行の本業は預金・融資・為替です。しかし融資では収益を挙げることが厳しい時代が長く続いています。そこで本部では有価証券への投資、営業店では投資信託や保険の窓販といった金融商品の販売による役務収益で稼いでいるのが実情です。ただしこれらの金融商品は差別化が厳しいという実情があります。
例えば投資信託は、銀行という業界の中でもメガバンク等の大手銀行、信託銀行、地方銀行、信用金庫等のどこでも取り扱っています。また有価証券の販売が本業とも言える証券会社でももちろん取り扱っています。個人が購入できる公募投資信託は6,000本を超える種類があるものの、その売れ筋は各金融機関で似通っています。そのため他行・他社との差別化が難しく、さらに各金融機関の営業店同士は近接しているので銀行マンは非常に厳しい戦いを日々強いられます。
このように差別化が難しい中で、銀行全体のノルマが支店・個人単位で割り振られ、ノルマが達成できないと自分自身の出世・上司の出世に係るという状況です。ノルマで燃えるというタイプの人ではなく、マイペースで働きたいというタイプの人にとっては地獄のような日々と言えるでしょう。
3.保守的な企業文化
銀行は給与や福利厚生といった待遇はあらゆる業界でトップクラスで安定して働くことができると言われます。しかし、その安定性の高さは、年功序列に代表される保守的かつ硬直した組織という企業文化に現れます。ここから将来展望に希望が待てずに転職を考える若手社員も存在します。
4.プライベートな時間が確保しづらい
銀行員はプライベートな時間を確保しづらいと言われます。他業種に比べて営業店が多く単身赴任者も多いので、平日は飲み会が多く、土日もゴルフをしたりします。新型コロナの影響や「働き方改革」が功を奏し、以前ほど多くはありませんが、比較的プライベートの時間を確保しにくい文化は残っているでしょう。
5.資格取得がつらい
銀行員は金融業界の他業種と比べて多くの種類の金融商品を取り扱うために様々な資格を取得する必要があります。職種や配属先によって異なりますが、入行後数年以内に以下のような資格・検定を取得する必要があります。
- 銀行業務検定(法務・財務・税務等)
預金・融資・為替といった銀行の本業に関する基礎知識習得に必要な検定試験です。 - 証券外務員・内部管理責任者
投資信託や国債等の窓販業務で必要です。内部管理責任者は業務に必須ではありませんが取得が推奨されるようです。 - 生命保険募集人・損害保険募集人
保険窓販業務で必要です。 - ファイナンシャル・プランニング技能士
銀行での業務に必須とは言えませんが本部から取得が推奨される資格と言われます。
そのため入行後しばらくはプライベートの時間があまり取れない時期があったという方も少なくないでしょう。
悩みが転職では強みになることも
上記の通り、銀行員ならではの悩みを5つ挙げましたが、この悩みが転職では強みになることもあります。例えば、
「1.人間関係がつらい」
逆に「ストレス耐性がある」ことに繋がります。というのは、どのような業界でも、ストレスに耐えることは出世する人、成功する人に共通する資質だからです。例えば新聞や雑誌、ネット上で成功したサラリーマン経営者の記事やコラムを読むと大抵が「きついノルマ」と「上司・同僚・部下、さらにお客さまからの有形無形のプレッシャー」に耐えて出世してきた人が多いことが分かります。また、
「5.資格取得がつらい」
は転職活動をする中で有益になる場面もあるかもしれません。例えば、以下の記事(「銀行からの転職!銀行員の強みと向いている業界とは?」)では、銀行員の向いている転職先としてIFAを挙げていますが、IFAに転職するには証券外務員が必須となります。
銀行員の強み
上記の通り悩みが強みになる場合もありますが、今一度、銀行員ならではの強みをここで整理したいと思います。
1.数字に強く論理的思考力が高い
銀行員は財務諸表を読みこなした上で企業の将来性や経営者の特性を把握し、その企業が融資実行すべきかどうかを日々銀行内において稟議書等の論理的な文書を作成し、かつ論理的に口頭で説明しています。また銀行員は預金・為替に加え、融資の実行のみならず債権回収、投資信託や保険販売等の資産運用手段の提供等幅広い金融に関する知識・経験を持ちます。
このような数字に強いこと・論理的思考力の高いことはビジネスマン共通に求められる資質であり、銀行員はどのような企業においても求められる人材といえます。
2.ストレス耐性がある
若い時から意思決定権があるクセがある企業経営者や富裕層と接し、きついノルマとそれに対する上司・同僚・部下からの成果や嫉妬等の精神的なプレッシャーという板挟み。それを日々乗り越えてきた銀行員のストレス耐性は、どのような企業においても求められています。
3.リスク感応度が高い
本業である個人・法人融資においては貸倒れが発生し回収できなくなるリスクを考慮して融資実行を完遂すること、投資信託等の個人向け金融商品販売等においては価格変動リスク等に勘案してお客さまに商品提案・購入していただくこと、これら両者とも過去実績の分析から将来をある程度見通す能力が必要とされます。このようなリスクと日々向き合ってきた銀行員はその論理的思考力の強さと相まって一般事業会社においても戦略立案等、将来を見通す必要がある業務において適応しやすいと考えられます。
まとめ
今回は銀行員の転職理由について、「人間関係がつらい」「ノルマがつらい」「保守的な企業文化」「プライベートな時間が確保しづらい」「資格取得がつらい」という5つをリストアップしました。ただ、転職理由のなかには、転職時に有利となる要素もあります。
現職での悩みが転職のきっかけとなる場合が多いですが、動き出す前に今一度その悩みを自己分析しましょう。その上で銀行にとどまるか、それとも新天地に向けて動き出すかを考え、行動することをおすすめします。
銀行員の転職先としては、同じ金融業界で、他金融機関やIFAなどがあります。また、他業界では事業会社の財務・経理部などでも活躍できるでしょう。銀行で培った経験、スキルを活かして、自分らしく働ける環境を探してみると良いでしょう。
\ 銀行からの転職を検討している方必見 /