転職するにあたって誰もが考えるのは転職先の報酬。このシリーズで取り上げるIFAには、腕に覚えがある営業マンにとっては魅力的な報酬体系があるようです。このコラムではこのIFAの報酬体系について解説します。
IFAの収益源は?
報酬体系にふれる前にまずはIFAの収益源を押さえておきましょう。
金融商品仲介業としての収益源
金融商品仲介業たるIFAの主な収益源は、
・株式の売買委託手数料
・債券の販売関連収益
・投資信託の販売手数料・代行手数料(信託報酬中の証券会社の取り分)
です。これらの手数料等そのものは、お客さまから所属先の「IFA法人(金融商品仲介業者)」が業務委託契約を結ぶ「証券会社金融商品取引業者)」に入るものであって、IFA法人に所属する金融商品を仲介したIFAの直接的な報酬ではありません。
なお、IFAビジネスを展開している証券会社では、IFAを介して売買される手数料は、個人投資家がその証券会社から直接売買する際の手数料とは異なる手数料体系を適用しているようです。
IFAの報酬体系
IFA法人に所属するIFAの収益源は前述の通りです。そこからIFAには概ね以下のような経過で報酬は支払われます。
報酬を受ける仕組み
IFA法人に所属するIFAにとっての報酬とは、金融商品を仲介した手数料収入です。
上記図のように、報酬の考え方としては
1.証券会社が金融商品の売買に係る手数料等(上記図❸)から業務委託手数料としてIFA法人に支払い(上記図❻)
2.1.からIFA法人が各種バックオフィス利用料等を控除
3.金融商品を仲介した所属IFA個人に2.から所定の割合(この率を「バック率」などと言うことがあるようです)で報酬が支払われる
という仕組みが多いようです。
IFAの世界では、これら一連の金融商品の売買等にかかる手数料収入(証券の仲介手数料)を収益源とした報酬は、一般に「コミッション」と言われます。
コミッションが主流だが別の報酬も
IFAの報酬は上記のようなコミッション(証券の仲介手数料)の他に、異なる報酬体系があります。例えば、
- 預かり資産に応じた報酬(フィー)
です。
また、金融商品仲介業とは別の報酬では、
- 生命保険販売業務
- コンサルティング
があります。
関連して少々古い調査ですが、QUICK資産運用研究所が実施した「IFA実態調査」(2018年9月実施)によると、IFAの主な収益源は
- 「証券の仲介手数料(コミッション)」が最多の36.0%、
- 「生命保険販売業務」が14.5%、
- 「預かり資産に応じた報酬(フィー)」と「コンサルティング業務(顧問料、相談料)」が8.0%
と続きました。
出典:QUICK資産運用研究所「IFA実態調査」(2018年9月実施)より一部引用
では実際にIFAの報酬は?
以上からIFAの報酬体系は大まかにご理解いただけたかと思います。では、実際の報酬はどうなのでしょうか。
社員、業務委託共にIFAの平均年収を公表しているIFA法人は見当たりません。ただ各種メディアから公表されているデータを拾うと以下のような傾向が見られました。
所属形態が社員(正社員・契約社員)の場合
ある転職サイトにIFA法人の「モデル年収例」として以下のような正社員の年収が掲載されていました(表記は各社でバラバラでしたがここでは統一しています)。
<IFA法人A社:正社員>
年収1,000万円 / 経験1年 /証券営業経験者(月給60万円+賞与+諸手当)
また、以下のようなケースもありました。こちらのケースでは正社員ですがインセンティブが歩合率として表示されていましした。
<IFA法人B社:正社員>
年収820万円 / 経験2年 /営業(月給25万円+インセンティブ)
※固定給に別途インセンティブ(歩合率60~75%)あり。
また、このようなケースもありました。
<IFA法人C社:正社員>
年収600万円~1,200万円(月給:40万円~80万円)
以上から、正社員の場合の給与はインセンティブ給を含めて年収は1,000万円前後とみられます。ただし、IFA法人は2022年7月末時点で全国に約800社ありますので実情はバラバラと思われます。また、そもそも腕に覚えがある営業マンがIFA法人に転職しますので、転職を検討する際は条件面を相対でしっかりと確認する必要があります。
所属形態が業務委託(個人事業主)の場合
一般に営業活動を頑張れば頑張るほど高い収入が期待できるとされているのが業務委託(個人事業主)の場合です。ただ、こちらも正社員のケースと同様に報酬を公表してるIFA法人は見当たりません。
一方、国内最大級のIFA法人かつ国内唯一の上場企業で、所属する全てのIFAが業務委託である株式会社アイ・パートナーズ フィナンシャルのIR資料等からある程度の報酬水準が推測されます。
例えば株式会社アイ・パートナーズ フィナンシャルの第17期有価証券報告書の75ページには「売上原価明細書」があり、その中の項目「支払成果報酬」(「委託契約のIFAに係る支払成果報酬です」という注記あり)を見ると、「当事業年度」(2021年4月1日〜2022年3月31日)では「2,792,891千円」となっています。その金額を単純に有価証券報告書記載の2022年3月期末の所属IFA数の212人で割ると、1,300万円強の数字となります。
以上から、あくまで上場企業である株式会社アイ・パートナーズ フィナンシャルの例となりますが、業務委託かつ完全歩合制の場合の平均年収は概ね1,300万円程度ではないかと推測されます。ただ、この数字はあくまで単純平均であり、より多く稼ぐ人もそうではない人もいるはずです。
また、報酬が完全歩合制の場合は顧客がつかないと給与はゼロどころか持ち出しになるケースもあります。そのためこのような業務委託でのIFA法人に所属する場合は、経済的に余裕を持った上でIFA法人に所属することが望ましいと言えます。さらに、業務委託の場合、個人事業主として各種事務も基本的にすべて自分でこなさなければならない上に、お客さまへのコミット度合いによって違いますが場合によっては休日での相談対応などでなかなか休みが取れないこともあるようです。
なお、この具体的な報酬については、以下の記事(「そこが知りたい!IFAの年収はどれくらい期待できるのか?」)でまとめていますので、ご参考にして頂ければ幸いです。
証券の仲介手数料以外でも稼ぐIFAも
前述の通り、金融商品仲介業としてのIFAは基本的に証券の仲介手数料を中心に報酬を得ます。加えて、保険募集人として活動しているIFAもいます。そのようなIFAは保険代理店出身者が設立したIFA法人が多く、その取扱いには保険募集人資格が必要とされます(保険募集人資格については以下の記事(「IFAになるためにどんな資格が必要?」)をご覧ください)。
ちなみに前述のQUICK資産運用研究所が実施した「IFA実態調査」(2018年9月実施)によると、IFAになる前の経歴によって収益源が大きく異なるようです。
例えば証券会社出身者は、
- 「証券の仲介手数料(コミッション)」が60.0%
- 「預かり資産に応じた報酬(フィー)」が11.9%
- 「コンサルティング業務」が6.0%。
との結果でした。一方、保険代理店出身者は、
- 「生命保険販売業務」が48.0%、
- 「証券の仲介手数料(コミッション)」が8.0%、
- 「コンサルティング業務」が4.0%
という結果でした。
出典:QUICK資産運用研究所「IFA実態調査」(2018年9月実施)より一部引用
まとめ
以上、今回はIFAの報酬にスポットを当てたコラムでした。
IFAは基本的に金融商品仲介業者ですので、収入源は基本は証券の仲介手数料です。一方で、IFAの注目度のアップとお客さまのニーズが拡大するにつれ保険販売業務等の他分野も取り扱うIFAも存在します。自身のキャリアにおける得意分野を見極めて業務に注力するか幅を広げるかを考えていきたいですね。
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