IFAへの転職について調べると、「仲介」と「媒介」という言葉の違いや使い分けに疑問を持つときもあるかと思います。このコラムではその違いについて解説します。なお、このコラムでは金融商品仲介業や金融商品取引業にまたがる解説が出てきますので、その違いについては以下の記事(「何が違う?金融商品仲介業と金融商品取引業」)をご参考にしていただければと思います。
「仲介」と「媒介」、どちらが正しいのか?
結論から言って「仲介」と「媒介」という言葉そのものの意味はほぼ同じと考えて差し支えありません。
日本取引所グループの用語集では、「媒介」について、
金融商品取引業者が行う媒介とは、有価証券の売買の仲介を行うことをいい、金融商品取引法上、金融商品取引業の一つとして認められている行為です。通常、金融商品取引業者が顧客間の売買の仲介を行うことをいい、「オンナヘンのばいかい」とも呼ばれています。
(出典:日本取引所グループホームページより一部引用)
とされています。つまり、媒介とは「有価証券の売買の仲介」のことです。
ただ、実際はこういう言葉を抜き出して考えても曖昧でスッキリしません。
その業務を定義する法律でその業務における行為がどのように定義付けがされているかをみてみましょう。
金融商品取引法がポイント
IFAが従事する「金融商品仲介業」は、金融商品取引法の中で定義されている業種です。金融商品取引法を読むと、第二条第十一項に「金融商品仲介業」が定義づけられています。
11 この法律において「金融商品仲介業」とは、金融商品取引業者(第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業又は同条第四項に規定する投資運用業を行う者に限る。)又は登録金融機関(第三十三条の二の登録を受けた銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関をいう。以下同じ。)の委託を受けて、次に掲げる行為(同項に規定する投資運用業を行う者が行う第四号に掲げる行為を除く。)のいずれかを当該金融商品取引業者又は登録金融機関のために行う業務をいう。
一 有価証券の売買の媒介(第八項第十号に掲げるものを除く。)
二 第八項第三号に規定する媒介
三 第八項第九号に掲げる行為
四 第八項第十三号に規定する媒介
(出典:e-govより一部引用)
二にある「第八項第三号に規定する媒介」とは以下を指します。
三 次に掲げる取引の委託の媒介、取次ぎ又は代理
イ 取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引
ロ 外国金融商品市場(取引所金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものをいう。以下同じ。)における有価証券の売買又は外国市場デリバティブ取引
(出典:e-govより一部引用)
また、「第八項第九号に掲げる行為」とは以下を指します。
九 有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い
「第八項第十三号に規定する媒介」とは以下を指します(第二条第八項第十三号)。
十三 投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介
(出典:e-govより一部引用)
つまり金融商品取引法の条文を読むと、金融商品仲介業者であるIFAは、他人であるお客さまと他人である証券会社という当当事者の間でなされる有価証券の売買という法律行為が成立するために尽力すること、つまり金融商品仲介業者であるIFAはお客さまと証券会社との金融商品売買の「媒介」をしているわけですね。
「代理」は認められているのか?
冒頭で「仲介」は「媒介」という両者の言葉そのものの意味はほぼ同じと考えて差し支えありませんと書きました。金融関連の仕事をする方は宅建士試験を勉強をした方も多いと思いますが、そのような方は「媒介」という言葉を聞くと「代理」という言葉を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。
それでは金融商品仲介業者であるIFAは「代理」をしてよいのでしょうか。
結論から言って金融商品仲介業者は「代理」は認められず、「媒介」のみが認められています。関連して金融商品仲介業者はお客さまに対して「所属金融商品取引業者等の代理権がない旨」を明らかにすることが求められています(金融商品取引法第66条第11項第2号)。ちなみに以下はその前後の条文です。
(商号等の明示)
第六十六条の十一 金融商品仲介業者は、第二条第十一項各号に掲げる行為(以下この章において「金融商品仲介行為」という。)を行おうとするときは、あらかじめ、顧客に対し次に掲げる事項を明らかにしなければならない。
一 所属金融商品取引業者等の商号又は名称
二 所属金融商品取引業者等の代理権がない旨
三 第六十六条の十三の規定の趣旨
四 その他内閣府令で定める事項
(出典:e-govより一部引用)
金融商品の媒介はIFAだけではありません
上記では金融商品仲介業者であるIFAを巡る金融商品の媒介について紹介しました。
この金融商品仲介業者が行う金融商品の媒介はIFAだけの専売特許ではありません。例えば一部のクレジットカード会社はその顧客層の厚さを強みとして金融商品仲介業者として業務を行っています。
例えば三井住友カードはSBI証券と、セゾンカードはスマートプラス、高島屋ファイナンシャル・パートナーズ(高島屋カード)はSBI証券と組んで、ポイントをためつつ、そのポイントやクレジットカード決済で投資信託を積み立てることができるようなサービスを提供しています(ここではひとまとめにご紹介していますのでサービスの詳細は各社のウェブページ等をご覧ください)。
このようなクレジットカード会社による投資(クレカ投資などと呼ばれるようです)では、証券会社とクレジットカード会社双方に大きなメリットがあるようです。例えば、これまでクレジットカード会社としてはそれほど接点がなかった「クレジットカード保有者で証券取引に興味のある層」にクレジットカードを推進できるというメリットや、このようなクレジットカード投資を機会に複数持ちするカード保有者にメインカードとして活用されることも狙っているようです。また、長期投資でクレジットカードが活用されることで解約を食い止める思惑もありそうです。
これらのクレジットカード会社が提供する積立投資は、IFAとは根本的に顧客層が異なると考えられますので、IFAにとってはそれほどの脅威にならないと思われます。
IFAの業務をおさらい
以上、IFAの業務について、その実務に本質的に関わる用語である「仲介」「媒介」について法的な側面からご紹介しましたが、今一度IFAの実務をおさらいしましょう。
IFAができること
IFAは、個人に合わせたライフプランの設計・提案を行うことが可能です。ライフプランは個人によって異なりますので、家族構成や年齢、収入・支出などの様々な基本情報と、今後想定できるライフイベントを入念にヒアリングした上で、ライフプランを設計・計案します。
ライフプランを実現するためにはお金が必要になりますので、そのために資産運用を行うことが必要です。この記事でも取り上げている通り、金融商品の提案を行う(有価証券売買の媒介)のもIFAの仕事です。もちろん、販売後は購入商品のアフターフォローも行っています。
また、昨今は金融商品の売買の媒介に限らず保険代理業や不動産、相続等のビジネスを展開をするところも出てきています。お客さまのお金に関するお悩みは全てIFAに相談することができますね。
IFAができないこと
一方で、IFAにはできないこともあります。
IFAは基本的に金融商品仲介業に従事する職業です。よって、そのビジネス展開は登録を行った業法に従うことになります。
この記事でお話しした通り、「代理」行為は認められません。また、お客さまから金銭もしくは有価証券の預託を受けることはできません。お客さまから金銭もしくは有価証券の預託を受けることはできません。お客さまが金融商品を購入する際はあくまでお客さまは証券会社に対して金銭または有価証券を預託することになります。
まとめ
以上、このコラムでは金融商品仲介業に関連してよく混同しがちな「仲介」と「媒介」という言葉の関係、さらに「代理」は可能か否かについてご紹介しました。IFAの業務への理解が深まれば幸いです。
\ IFAへの転職を検討している方必見 /